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「漁網」をおしゃれな製品へ。アップサイクルを加速帝人株式会社様インタビュー

2022.02.03

大手繊維メーカーの帝人では、使用済みポリエステル漁網を回収してリサイクルを行う「Re:ism(リズム)プロジェクト」を2021年からスタートしました。漁網メーカーや樹脂加工会社など5社のタッグにより、食器やトレーといった樹脂製品から、バッグ、断熱材などの繊維製品に至るまで多彩な試作品を開発。2022年より一部製品の実証テストをスタートさせます。使用済み漁網が抱える問題点から今後の展望まで、帝人株式会社で同プロジェクトを担う森貞和仁さんにお話をうかがいました。

「難易度の高い、ポリエステル漁網のリサイクルにチャレンジ」

これまで中古漁網は東南アジア各国で再利用されていましたが、バーゼル条約により輸出禁止に。リサイクルシステムの確立が急務になりました。

漁の方法によって定置網や巻き網など網の種類はさまざまありますが、これらの漁網は役目を終えた後、回収されていることをご存じでしょうか。でも網の素材によって、その行く先は異なります。漁網はナイロン製が約8割、ポリエステル製が約2割を占めており、ナイロンは原材料が高く、かつ再生しやすいことからリサイクルが進んでいます。一方でポリエステルは粗原料が安く、また再生しにくいためリサイクルが難しく、ほとんどが産業廃棄物として埋め立て処分されているのが現状です。またナイロン、ポリエステル漁網には耐久性を高めるための樹脂加工が施されており、リサイクルの難易度を高めています。
ポリエステル漁網は、主にマグロなどの巻き網漁に使用されています。1セット1億円前後という高価な漁網ですが、5~7年で使用済みとなり、その回収量は月に20~30トンにも。そこで帝人では繊維メーカーの使命としてポリエステル漁網をリサイクルし、ごみを軽減するシステムづくりにのり出しました。

「得意分野を持つ5社のタッグで、『Re:ismプロジェクト』をスタート」

回収した漁網を樹脂洗浄・温水洗浄をし、樹脂ペレットに加工。このペレットから「Re:ism」マークのさまざまな製品へ「アップサイクル(モノの価値を高めるリサイクル)」を行います。

ポリエステル漁網のリサイクルにあたり、漁網メーカーや樹脂加工メーカーなど5社とタッグを組み、2021年「Re:ism(リズム)プロジェクト」を立ち上げました。ポリエステルはリサイクルコストが高いことから、使い捨てではなく、繰り返し使用できるリターナル樹脂製品の開発を目指すことに。第1弾として誕生したのが食堂用の「トレー」です。
まずは2022年1月から帝人工場の社員食堂で実証テストを行って品質をしっかりと確認し、販売ルートを模索していきます。リターナルランチボックスの製品化も進んでおり、海辺のマルシェや飲食店で漁網生まれの食器を活用してもらえたら、海への環境意識がより高まるのでは!と期待しています。

~「Re:ism(リズム)プロジェクト」のメンバーと役割~
漁網の回収/木下製網(株)
漁網の樹脂洗浄/帝人(株)
漁網の温水洗浄/トーセン(株)
樹脂ペレット化/山一(株)
樹脂製品の製造/(株)台和
⇒⇒製品の販売/帝人

「漁網から生まれた繊維で、ペンケースや住宅用建材も!」

漁網のリサイクルで生まれた繊維で製作した手帳カバーやペンケース。合成皮革のような独特な風合いがスタイリッシュ。この色は漁網本来の色であり、一部エンジ色の製品もあります。

漁網のリサイクルから、もうひとつ生まれた面白い素材が「繊維」です。この繊維をシート化し、合成皮革のような風合いを持つ手帳カバーやペンケースを開発。この繊維には着色ができないため、漁網本来の黒を生かしてデザインすることで、おしゃれなアイテムに生まれ変わりました。
また、住宅用の断熱材の開発も進んでいます。帝人が開発した新建材LIVELY WOODと断熱材をセットにしてPRするなど、社内とも連携して相乗効果を狙っていきたいと思っています。
プロジェクトを始動してまだ1年ですが、漁網リサイクルによる「樹脂」「繊維」の2素材は高い可能性を秘めており、展示会でも多数の反響をいただいています。海洋プラスチックごみ問題が叫ばれる中、各企業と協力し、SDGsの目標に少しでも貢献したいと考えています。

「A港の△△丸産、といった顔の見える素材力も付加価値に」

リサイクルできるポリエステル漁網の量は、月に1トン程度です。今後は巻き網漁の拠点港に洗浄機械を配置し、リサイクルを加速していきたいと考えています。回収した巻き網はトレーサビリティが明らかなので「A港の△△丸が使用していた漁網」といった、顔の見える素材として楽しむことも可能です。また、漁港内で使用する魚介かごなどに加工すれば、「漁網の地産地消」が叶います。漁網のままでは使い捨てですが、一度樹脂ペレットにリサイクルすると、溶かして何度も再利用できる点も魅力ですね。
よく「漁網から漁網へリサイクルできないのか?」という質問を受けますが、加工時の熱で強度が落ちてしまうため、現状は難しいです。将来的に技術が進めば不可能ではないと考えていますので、この漁網リサイクルはそれまでのつなぎのようなものと言えますね。この「Re:ism」を持続可能なプロジェクトにするためにも、魅力的なアイテムの開発と販売ルートの開拓が私たちの一番のミッションです。

https://team.expo2025.or.jp/ja/challenge/79

帝人株式会社 マテリアル新事業部門
スマート&セーフティ事業推進班
SDGs・環境関連プロジェクト担当 森貞 和仁さん

1985年帝人株式会社入社。ポリエステル重合技術開発の後、相模原・日野の研究所にてフィルム加工技術の開発を担当。1997年より10年間在宅医療の営業を経て、当時の帝人ファイバー(株)にて防蚊生地のスコーロンのプロジェクトを担当。2009年よりリチウムイオンバッテリー用セパレータ部材の事業立ち上げのため、韓国ソウルに4年半駐在を経験。2020年9月よりマテリアル新事業部門スマート&セーフティ事業推進班で現職であるサーキュラーエコノミーチームとして、ポリエステル漁網のリサイクルプロジェクトを推進中。

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