食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる
キリンホールディングス株式会社様
2022.06.20

CSVとはCreating Shared Valueの略称。米国の経営学者マイケル・ポーター氏がハーバード・ビジネス・レビューで提唱したことで注目されるようになったこの言葉は、「社会価値」と「経済価値」の二つの価値の共創を意味するといわれています。酒類・飲料メーカーとして知られるキリンホールディングス株式会社ですが、その事業内容は多岐にわたります。昨今においてはヘルスサイエンス領域にて社会的な存在意義を追究。社会と価値を創造し持続的に成長するための指針として「CSVパーパス」を策定し、5年後の2027年には世界のCSV先進企業となるべく、グループ全体で社会課題の解決に取り組むことで社会的価値を創出しながら、競争力強化と事業の成長という経済的価値につなげてCSV経営を深化させることを目指しています。
食と健康の新たなよろこびをひろげ、こころ豊かな社会を実現しお客様の幸せな未来に貢献するために、キリングループは今何をすべきと考えているのか。
キリンホールディングス株式会社 CSV戦略部 金田大樹さんにお話をお伺いしました。
【キリンのCSV戦略】

1907年創業のキリンホールディングス。キリンと言えばビールと思われがちですが、1980年代から医薬事業に参入している他、バイオケミカルの先端技術を持つ協和発酵バイオなどの事業会社を傘下に有しており、食から医にわたる領域において事業を幅広く展開しています。創業以来、低糖質・低カロリービールや人工色素を使わない飲料(キリンレモン)の開発など、社会の課題を解決する商品・サービスを展開してきたキリンホールディングスは、2011年の東日本大震災での被災と復興支援の経験をきっかけに一過性ではない社会課題の解決を目指し、CSV経営を志向してきました。2019年には「酒類メーカーとしての責任」を前提に「健康」「コミュニティ」「環境」の社会課題の解決に取り組むことを示した “CSVパーパス”を策定するなど、グループの強みを活かして社会課題を解決しつつ、自社の経済的価値も獲得することで、企業としても持続的に発展・成長していくことを目指しています。これらは現在、CSVコミットメントという形で成果指標・目標値を設定しており、短・中期の具体的なアクションプランとしています。
キリンホールディングスのCSV戦略
【スリランカにある紅茶農園のレインフォレスト・アライアンス認証取得を支援】

カエルのマークが印象的な、「レインフォレスト・アライアンス認証」。これは森林や生態系の保護、農園の労働環境など、持続可能な農業のための包括的な基準を満たした農園に与えられる認証制度のことです。
キリングループの主力商品である「午後の紅茶」の茶葉には、スリランカの農園で栽培されたものが多く使用されています。キリングループは、良好な相互依存の関係ともいえるお互いの未来のために、スリランカの農園を支援する活動を続けています。具体的には、レインフォレスト・アライアンス認証を取得するためのトレーニング費用をキリングループが提供。農薬の使い方やごみの捨て方など農園の生産体制を整えるトレーニングを行うことで、現地の紅茶農園で働く多くの方の労働環境の向上に寄与できています。実際、活動を始めてから労働者の給与は年々上がり、疾病率も半減させることができた農園があり、ポジティブな影響を確認しています。現在93の大規模農園がキリングループの支援によって認証を取得しており、これはスリランカの大規模農園の30%以上にもあたります。支援を行う中で周囲の小農園が大農園に茶葉を持ち運んでいることもわかってきたため、今後は周辺の小農園についても支援を拡大する予定であり、3年後の2025年には1万の小農園がレインフォレスト・アライアンスのトレーニングを受けられるよう支援していきたいと考えています。キリングループはすでに認証を取得された茶葉のみを購入するだけでなく、その農園自身の認証取得を支援し持続可能性を高めることで、持続可能なスリランカの農園経営を根本から支えるとともに、事業の持続性も向上させることで、CSVを実現しています。
レインフォレスト・アライアンス認証取得支援
【免疫領域で人々と地球の未来に貢献する~「プラズマ乳酸菌」】

キリングループが医薬事業への参入を始めてからすでに40年以上。以来、人々の健康に貢献してきましたが、中でも免疫研究においては35年以上の研究の成果が結実しようとしています。「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」と宣言するキリングループは、2010年、特定の細胞のみでなく、複数の細胞をつかさどる免疫の司令塔に直接活性化を働きかけることのできる、世界唯一の乳酸菌、「プラズマ乳酸菌」を発見し、2020年にはこの「プラズマ乳酸菌」を配合したiMUSE(イミューズ)ブランドが「健康な人々の免疫機能の維持をサポートする商品」として、免疫領域で日本初の機能性表示食品の届出が受理されました。

プラズマ乳酸菌の大きな特徴のひとつは冷蔵に限らず常温でも作用すること。これは、グローバルであらゆる食品への導入を可能にしています。また、保管にも輸送にも温度管理の必要がないため、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの排出が抑えられることも特徴です。プラズマ乳酸菌関連商品は、既に国内グループ会社では飲料やサプリメント・乳製品として販売しているほか、国内の他の食品企業からは青汁やグミなどで商品化・販売を開始しており、さらには海外ではベトナムやアメリカで様々な食品・飲料の商品として販売を開始しています。環境の面では、保管時や輸送時のCO2を削減するだけでなく、消費期限を大幅に延ばし食品ロスを抑えることにも貢献するなど、非常に有能な素材であり、今後もプラズマ乳酸菌を通じて現代社会の課題を解決し、大きな社会的価値と経済的価値を創り出していくことが期待されます。
今後、キリングループはヘルスサイエンス事業のさらなる拡大を目指していきます。「ビールや飲料が中心の企業から、発酵・バイオテクノロジーを活用しお客様の「心と体の健康」を支援していく企業へと進化していきたい。」そんなキリングループにとってプラズマ乳酸菌は事業転換を担う大きな柱となっていくことでしょう。
キリンのプラズマ乳酸菌

キリンホールディングス株式会社
CSV戦略部
金田 大樹さん
入社後は酒類事業の営業を担当した後、2021年よりCSV戦略部にてグループ全体の戦略策定とマルチステークホルダー(お客様・従業員・投資家など)に関わる広報(コミュニケーション)業務を担当。
キリンホールディングス株式会社